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PLDの概要とパスカル製PLDの特長

パルスレーザーデポジション(PLD)法

パルスレーザーデポジション(Pulsed Laser Deposition : PLD)法は、真空チャンバー内に設置した原料ターゲットにチャンバー外部からレーザー光をターゲットに照射することで、ターゲットから原子(分子)の引き剥がし(アブレーション)を行いターゲットに対向する基板に薄膜を形成する成膜方法である。
典型的なPLD装置の構成を図1に示す。 ターゲットは作成する薄膜と同一組成、あるいは組成の一部を構成する酸化物等の粉末をペレット状に焼結したものを、組成変調,ドーピング,多層膜作成の目的に合わせて複数用意する。 ターゲットはステージ上に設置し、交互にレーザー光照射ができるようにする。一方、基板(基板ヒーター)は、ターゲットから飛散する成膜活性種の分布を考慮して、ターゲットから適当に離れた位置に設置する。 アブレーションレーザー光は石英窓を通して斜入射によりターゲット表面で適当な強度で集光させる。 レーザー光はターゲット材の種類により選択使用される。 酸化物の成膜ではエキシマレーザー(ArF: 193nm, KrF: 248nm)や Nd:YAGレーザー(3倍波: 355nm, 4倍波: 266nm)が用いられることが多い。

レーザーMBE装置の構成
図1  レーザーMBE装置の構成

PLD法は以下の特徴を有する。

  • 酸化物のような高融点物質の成膜が容易である。
  • ターゲットと薄膜の成分元素のずれが少ない。
  • 光プロセスなので不純物による汚染が少ない。
  • アブレーションレーザーパルス数による成膜速度の精密な制御が可能である。
  • 広範囲のガス圧領域での成膜が可能である。
  • ターゲットの交換が簡単で、異種薄膜の積層化が容易である。

PLD法に関連した研究および装置開発は、1980年代後半から1990年代前半に進展した。 その結果1990年代にはPLD法を用いた酸化物材料の成膜に関して多くの研究成果が蓄積された。

PLDからレーザー分子線エピタキシー(LMBE)へ

PLDによる成膜手法を確立する黎明期には、PLD成膜はターゲット材料,基板材料,基板温度,プロセス圧力に関して多種・広範囲に渡って試行されてきた。 一方、銅酸化物系材料による高温超伝導発見に端を発し、酸化物の電子材料としての地位が高まってくると、酸化物材料にもシリコンやガリウム砒素のような精緻な結晶成長制御が求められるようになってきた。 PLD法では、以下の条件を規定すると、従来の(クヌーセンセルを用いた)分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy : MBE)法と同様の結晶成長ができます。 この成膜方法は、従来MBE法に倣ってレーザー分子線エピタキシー(Laser Molecular Beam Epitaxy : Laser MBE または LMBE)法と呼ばれる。

  • チャンバーを超高真空に排気、プロセス圧力も高真空領域に設定して、不純物汚染の排除と平均自由行程の確保を行う。
  • アブレーションレーザー光強度、周波数、パルス数の制御により、成膜レートを1-数原子層オーダーにする。
  • 作製する薄膜に対して、格子定数、方位が整合する基板を選択使用する。
  • 基板温度を結晶成長に適した温度に設定する。

LMBE法においても、従来のMBE法と同様に、反射高速電子線回折(RHEED)の振動が見られる(図2参照)。 さらにLMBE法では、アブレーションレーザー光強度の安定化、ターゲット表面の平滑化など理想的な条件が整えば、RHEED振動周期をレーザーパルス数で規定することができる。 これは従来型MBE法よりも精確な結晶成長制御ができることを示唆している。

RHEED強度振動の模式図
図2  RHEED強度振動の模式図

パスカルでは、1995年より、鯉沼教授,川崎教授の御指導により、LMBE法を志向したPLD/LMBE装置の開発を行ってきた。 10年来の装置開発と納入実績により以下に示す当社独自のノウハウを蓄積してきた。

  • 従来型のMBE装置に比べて小型のPLD/LMBE装置:他の分析装置とのドッキング可能
  • 基板加熱方式の選択
  • ロードロック室による基板,ターゲットの交換

コンビナトリアル手法の導入

医薬・製薬においては、もう避けて通ることのできないコンビナトリアルケミストリー。 これは、パラレル合成により、あらゆる組み合わせの試料を一括して作製し、スクリーニングする手法であり、これによって開発効率が指数関数的に加速されました。 これを薄膜合成に応用しない手はありません。 パスカルでは、世界に先駆けてコンビナトリアルPLDチャンバーを開発してきました。 その経験を生かして、皆さまの薄膜合成をお手伝いします。

コンビナトリアル薄膜合成の模式図
図3  コンビナトリアル薄膜合成の模式図

酸化物エレクトロニクスの展開

酸化物の分子層エピタキシー技術は、以下のような未来のエレクトロニクスに生かすことができると期待されます。

  • シリコンエレクトロニクスの極限追求
  • 量子効果エレクトロニクス
  • 高温超伝導エレクトロニクス
  • 全エピタキシャル酸化物エレクトロニクス

各種超薄膜・デバイス技術への応用

さらにこの装置をダイヤモンドやフラーレン,Siと酸化物の接合デバイス,GaNを始めとする窒化物,さらには有機薄膜に至る、種々の薄膜や接合素子の作製にも適合できます。

新製品情報

2021年3月
【真空搬送システム】
クラスターシステム
2020年2月
【真空部品】
アジレント社製 新型TMP TwisTorr 305 FS
2017年3月
【真空薄膜形成装置】
レーザーアシスト基板加熱機構
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イベント情報

2022年9月20日〜23日
【併設展示】
応用物理学会秋季学術講演会(於:東北大学 川内キャンパス)
その他のイベント情報 >>

トピックス

2021年5月1日
関東営業所(埼玉県新座市)を移転しました。
2018年12月17日
茨城事業所(茨城県那珂市)を移転しました。
2013年10月31日
文部科学省による「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」拠点に東京大学等と共に採択されました。
2011年4月15日
原子散乱表面分析装置 が、りそな中小企業振興財団・日刊工業新聞共催第23回「中小企業優秀新技術・新製品賞」一般部門“優良賞”を受賞しました。
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